2025年夏の参議院選挙を前に、自民・公明両党が再び「国民一律の現金給付」という大きな政策カードを切ろうとしています。一見すると物価高騰や経済不安に対応した国民支援策に見えるこの動き。しかし、背景を探ると、そこには選挙対策という明確な意図が透けて見えます。今回の現金給付案が本当に国民のためになるのか、それとも政権浮揚を狙った「バラマキ」に過ぎないのか。過去の事例と比較しながら、その課題と問題点を検証します。
現金給付のきっかけは「トランプ関税」?
今回の給付案が浮上した直接的なきっかけは、米国のトランプ大統領による関税強化措置の再発動です。これにより国内企業や輸出業者への影響が懸念され、経済対策が急務となったのは事実です。実際、自民党の小野寺政調会長は9日、群馬県での視察中に林官房長官から電話を受け、「党として早急に経済対策を取りまとめるように」との指示を受けたことを明かしています。
その対策の柱として挙げられているのが、国民への一律現金給付です。
石破政権の低支持率が背景に?
与党がここまで給付案に前のめりな背景には、現在の石破内閣の支持率低迷があります。経済対策の遅れや外交不安も重なり、参院選を控えて支持層の引き締めが急務となっています。ある自民党中堅議員は「有効な手を打てず参院選を迎えれば、さらに厳しい戦いになる」と指摘し、現金給付の必要性を強調しています。
また、公明党の岡本政調会長も「現金給付はもちろん選択肢のひとつ。個人消費を支えることが重要だ」と語っており、与党内の足並みは概ねそろっているように見えます。
給付額を巡る駆け引き
現在、与党内では一人あたり3万〜5万円の支給案が主に検討されていますが、公明党の一部からは「インパクトを出すには10万円は必要」との声も上がっています。これは2020年のコロナ禍で実施された一律10万円給付の効果を意識したものでしょう。
しかし、給付の実施には補正予算の編成と国会での成立が不可欠です。特に今の衆院では与党が過半数を割っており、一部野党の協力が不可欠。そのため、政党間協議には一定の時間を要し、選挙までに間に合うかどうかは微妙な情勢です。
バラマキはインフレを助長する
ここで重要な視点が「インフレとの関係」です。現金給付は短期的な購買力の押し上げにはつながりますが、同時に物価上昇圧力を強めるリスクも孕んでいます。特に現在、日本銀行は金融引き締めに転じ、政策金利の引き上げを段階的に進めてインフレを抑制しようとしている最中です。
そのようなタイミングで一律給付のような景気刺激策を実施すれば、中央銀行の引き締めと政府のバラマキという「政策のねじれ」が発生し、政策全体として矛盾が生じます。結果的に、物価高に悩む国民生活をさらに圧迫する可能性も否定できません。
給付金によって一時的に消費が拡大したとしても、その反動で物価がさらに上昇すれば、家計の実質的な購買力はむしろ下がることになります。これは本末転倒です。
過去の給付は政権浮揚につながったか?
2020年の特別定額給付金や、それ以前の地域振興券など、日本では過去にも複数の現金給付策が実施されてきました。しかし、それらが持続的な経済効果や政権支持率の向上につながったとは言い難い現実があります。むしろ一時的な人気取りとの批判や、財政健全性への懸念が強まり、逆風となるケースもありました。
今回の給付案も、「選挙目当てのバラマキではないか」という懸念が広がれば、逆効果になりかねません。
本当に求められている政策とは?
国民が今求めているのは、単なる一時金ではなく、将来にわたって安心できる生活基盤の整備です。医療・福祉・教育・住宅政策の充実や、持続可能な物価対策、安定した雇用環境の整備など、「中長期的に安心できる政策」の実行こそが重要です。
現金給付は即効性こそあるものの、その場しのぎに終わるリスクが高く、持続的な経済成長や生活安定にはつながりません。
おわりに:選挙と政策、どちらを見ているのか
参院選を控え、政権与党が危機感を強めるのは当然かもしれません。しかし、有権者の目はかつてより厳しくなっています。「またバラマキか」という冷ややかな反応が広がれば、政権浮揚どころか逆風になりかねません。
今こそ政治に問われているのは、目先の支持率や選挙結果ではなく、未来を見据えた持続可能な政策ビジョンです。現金給付という短期的な施策に終始せず、構造的な改革と国民への真摯な説明責任が求められています。
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