かつて日本の衆議院選挙では「中選挙区制」が採用されていました。しかし、1994年の選挙制度改革によって中選挙区制は廃止され、現在の「小選挙区比例代表並立制」に移行しました。
「なぜ中選挙区制は廃止されたのか?」「何が問題だったのか?」「メリットもあったのでは?」といった疑問を持つ人も多いでしょう。
この記事では、中選挙区制の仕組みと課題、小選挙区制との違い、お金のかかる選挙事情、制度改革の背景まで、わかりやすく整理して解説します。
■中選挙区制とは?仕組みの基本
中選挙区制とは、1つの選挙区から複数の議員(通常3〜5人程度)を選ぶ制度です。日本では戦後から1993年の衆議院選挙まで使用されていました。
有権者は1人の候補者に投票
各選挙区で得票数の多い上位数名が当選
たとえば「定数5人」の選挙区なら、得票数上位5人が議席を獲得する形です。
■なぜ中選挙区制は廃止されたのか?
中選挙区制の最大の問題点は、**「同じ政党内での候補者同士の競争が激しくなり、選挙にお金がかかりすぎる」**という構造にありました。
▼中選挙区制の主な問題点
同じ政党の候補者同士がライバルになる
→ 自民党A候補 vs 自民党B候補という争いも日常茶飯事。
→ 党内分裂や派閥抗争の温床に。後援会や地元企業との癒着が強化されやすい
→ 「誰よりも多く票を取る」ために個別利益を優先。
→ 結果として、**金権政治や汚職事件(リクルート・佐川急便事件など)**が多発。選挙費用が膨大になる
→ 地元活動や後援会行事への資金投入が必須。
→ 候補者は「政治資金集め」に奔走する悪循環。
このような背景から、「政治のカネをめぐる問題」を断ち切るために中選挙区制は見直され、1994年に小選挙区比例代表並立制への変更が実施されました。
■小選挙区制との違いとは?
現在の制度は、**1選挙区に1人しか当選しない「小選挙区制」**と、**比例代表制を組み合わせた「並立制」**です。
制度 | 特徴 |
---|---|
中選挙区制 | 1選挙区に3〜5人当選/同党内競争あり |
小選挙区制 | 1選挙区1人だけ当選/党同士の一騎打ち |
比例代表制 | 全国またはブロック単位で党の得票に応じ配分 |
小選挙区制は**「政権交代が起きやすく、政治が明確化する」**というメリットがある一方、少数政党が不利になりやすいという批判もあります。
■中選挙区制のメリット・デメリット
▼メリット
同じ選挙区から複数人当選 → 少数派や無所属のチャンスがある
民主主義的に多様な意見が反映されやすい
地元に根差した議員が多く、選択肢も多い
▼デメリット
同党内での争いによる分裂・派閥抗争
金権政治の温床になりやすい
政策よりも「顔が利く」「地元への利益誘導」重視
結果として、「派閥支配型の政界構造とカネの政治」が固定化されてしまいました。
■選挙にかかるお金の問題
中選挙区制下では、とにかく「カネがかかる選挙」が常態化していました。
地元の冠婚葬祭への参加・祝儀・香典
支援者の後援会旅行・ゴルフ・宴席
選挙カー・ビラ印刷・ポスター設置
「他候補より目立たなければ落ちる」という競争が、非効率かつ不健全な政治資金の流れを生みました。
■中選挙区制復活の可能性はあるのか?
現在の選挙制度にも課題(死票の多さ・少数意見の切り捨てなど)があり、「中選挙区制に戻した方がいいのでは?」という声も一部ではあります。
しかし、
再び金権政治のリスクが高まる
政治の対立軸があいまいになる
小党乱立の恐れ
といった理由から、現実的には中選挙区制復活の動きはほぼ見られません。
■まとめ:中選挙区制の廃止は「政治とカネ」からの脱却が目的だった
項目 | 内容 |
---|---|
中選挙区制とは | 1選挙区から複数人当選。かつての衆議院選挙制度 |
廃止理由 | 派閥抗争・金権政治・選挙コストの高騰が問題視 |
小選挙区制との違い | 一選挙区に1人のみ当選。明確な政党対立構図、ただし少数意見が通りにくい |
メリット | 多様な意見反映・無所属にもチャンス |
デメリット | 政治資金・選挙汚職・派閥争いの温床 |
復活の可能性 | 現状では低いが、制度への再議論の余地はある |
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