トランプ政権、わずか100日で「破壊と分断」　バイデン前大統領の怒りはもっともだ

「100日足らずで、これほど国を壊すことができるのか──」
バイデン前大統領が退任後初の演説でトランプ政権を「破壊と被害の元凶」と痛烈に批判しました。これは決して政治的な嫌悪感からくるものではなく、実際に進行している国の瓦解への、心からの警鐘です。

2025年1月、トランプ氏が再びホワイトハウスに戻ってからのわずかな期間で、アメリカは内政・外交の両面で劇的に変貌しました。その荒々しく独断的な政策変更がいかにアメリカ社会を引き裂き、世界の信頼を損ねているのか──。
バイデン氏の怒りは、まさに“もっとも”としか言いようがありません。

■社会保障制度への「息をのむような破壊」

まず、最も深刻なのが社会保障制度の切り崩しです。トランプ政権は「無駄を省く」という名目で、社会保障庁（SSA）の人員を大規模に削減し、地域窓口の閉鎖を進めました。

背景にあるのが、イーロン・マスク氏を長官に据えた新設の「政府効率化省（DOGE）」です。IT化と自動化による省力化を進める一方で、受給者の生活に必要な相談窓口が急速に失われつつあります。

バイデン氏が「息をのむような破壊」と怒りを込めて語ったのも当然です。高齢者や障がい者が生活に支障を来している中、政府は無関心。国の“思いやり”までが削られているように見えます。

4月2日、トランプ政権は突如として「Liberation Day（解放の日）」を宣言し、すべての輸入品に最低10％、中国製品には最大145％の関税を課す異例の措置を発表しました。

世界中の市場はこれに反応し、株式は急落、物流コストも跳ね上がり、アメリカ国民の生活必需品価格に直接的な影響が出始めています。
中間層や中小企業はすでに悲鳴を上げており、この政策は「アメリカを強くする」どころか、国内経済に深刻な打撃を与えているのです。

バイデン氏の「国を守るはずの政策が、自国民を苦しめてどうするのか」という思いは、すべての庶民の声を代弁しているように感じます。

さらに見逃せないのが、外交政策の劇的な変化です。
トランプ政権はNATOへの拠出を削減し、ヨーロッパ諸国に「自国は自分で守れ」と一方的に通告。東アジアでも、韓国駐留米軍の撤退を示唆し、日本に対しても防衛費負担の大幅引き上げを求めました。

さらに、イスラエルとの軍事協力を強化する一方で、パレスチナやイランに対しては再び強硬姿勢に転じ、中東情勢も再び緊張しています。

バイデン政権時代に苦労して再構築した同盟関係と信頼が、ほんの数カ月で壊されていく──。その無責任さに、バイデン氏の目には「怒りと悲しみの入り混じった焦燥」が滲んでいました。

移民政策においても、トランプ政権は再び国境の軍事化・強制送還の拡大・一部の市民権申請凍結を進めています。

表面的には「不法移民対策」とされていますが、実態はアメリカ社会における“希望”と“チャンス”という理念を破壊するものです。

バイデン氏が演説で語った、「誰も王ではない。誰もボスではない。すべての人にチャンスがある」という言葉の意味が、これほど重く響く時代があったでしょうか。

今回の演説で、バイデン前大統領ははっきりと述べました。

「これほど国が分断した状態ではやっていけない。私も長く政治に関わってきたが、ここまで酷いのは見たことがない」

実際に、政権発足以降、アメリカ国内では「反トランプ」「親トランプ」の対立が激化。学校や職場、家庭内にまで政治的分断が広がっています。

そして、この危機感こそがバイデン氏を立ち上がらせた理由であり、その怒りは単なる政敵への批判ではなく、国家の根幹を守ろうとする叫びです。

わずか3カ月の間に、アメリカの社会保障は切り崩され、経済は混乱し、外交は孤立を深め、移民政策は再び恐怖と分断をもたらしました。

バイデン前大統領の怒りは、「アメリカを愛する者の怒り」です。
それは理屈ではなく、「人としての怒り」。
そして、「次の世代に誇れる国を残したい」という真っ当な政治家としての責任感に根ざしています。

今のアメリカには、この怒りに共鳴し、行動する人々の声が必要です。
バイデン氏の警告は、まさに今、この国が立ち止まって考え直すべきタイミングにあることを示しています。