「内閣官房機密費」──ニュースや国会でたびたび登場するこのワード。
名前からして“怪しげ”な印象を受けるこの予算は、実は私たちの税金から支出されている国家予算のひとつです。
しかし、その中身は極めて不透明で、いつ・誰に・何のために使われたのかがほとんど開示されないという特殊な制度でもあります。
この記事では、内閣官房機密費とは何かをわかりやすく解説しつつ、使い道・歴史・開示の限界・廃止論まで整理してお届けします。
■内閣官房機密費とは?──別名「政策推進費」
内閣官房機密費は、正式名称を「内閣官房報償費(政策推進費)」と言います。
内閣官房(首相直属の事務部門)が首相の裁量で自由に使える特別な予算です。
予算規模:年間約12~14億円(2023年度は約12.6億円)
財源:すべて税金
会計:領収書・使途報告なしで使用可能
支出単位:1億円単位で現金引き出しも可能(現金主義)
つまり、「誰に・いくら・何のために使ったのかを一切記録せずに済む」という、国家財政の中でも極めて特殊な支出なのです。
■内閣官房機密費の使い道:何に使われているのか?
正式な使途は明かされていませんが、元官房長官や報道、裁判資料などから以下のような使い道が推測されています:
▼主な使い道(とされるもの)
各国外交官・要人への接待・非公式支援
諜報活動(外国情報機関との連携含む)
与野党議員への「根回し費用」
国会対策(野党議員への“懐柔”)
一部メディア関係者への接待・情報操作
たとえば、首相動静に映らない夜の会食代や、特定報道機関との関係維持に使われたという証言もあり、いわば**「政府の裏金」的な側面**が強く批判されてきました。
■いつから存在するのか?──戦後から続く“恒例予算”
機密費の仕組み自体は、戦後すぐの1947年に設置された内閣官房報償費に起源があります。
つまり、日本国憲法施行とほぼ同時に始まった制度ということです。
当初は戦後復興や占領政策への対応という「国家的緊急性」が背景でしたが、戦後70年以上が経過した現在も、制度の根本は変わらぬまま残されています。
■開示請求はできる?──“使ったこと”は開示されるが、“中身”は開示されない
情報公開法により、内閣官房機密費の支出額(総額)と時期は公開されています。
しかし、以下は一切開示されません:
項目 | 開示されるか? |
---|---|
いつ使ったか | ◯(月単位) |
いくら使ったか | ◯(総額) |
誰に使ったか | ✕ |
何に使ったか | ✕ |
領収書・証拠 | ✕ |
さらに、内閣官房の内部では使途の詳細記録さえ残していないとされ、「そもそも追跡不能」という恐るべき状態にあることが、国会答弁などから判明しています。
■過去にはスキャンダルも──裁判で明かされた“政治工作”
2010年代には、情報公開訴訟を通じて元官房長官・野中広務氏が「野党対策に使った」と証言し、大きな波紋を呼びました。
1998年:1日で1億円を引き出し、直後に野党幹部と会食
2002年:報道関係者への“便宜供与”の証言
こうした証言は、機密費が政権維持のための“口封じマネー”になっていた疑いを強く裏付けています。
■廃止は可能なのか?──現実的には難しい
市民団体や一部野党からは、「機密費を廃止または全面開示せよ」という声もあります。
しかし、政府側は一貫して次のように反論しています:
「外交や安全保障上、機密性が求められる」
「開示すれば機密費の意義が失われる」
「諸外国も同様の制度を持っている(例:米CIA秘密予算)」
つまり、“中身は怪しいが、必要悪”として容認されているのが現実です。
■今後の論点:開示ルールの明確化こそ必要
廃止が難しいのであれば、せめて**「基準」や「報告制度」の整備**が求められます。
一定額以上の支出に関しては非公開でも内部記録義務化
年度ごとの第三者監査制度の導入
使用目的ごとの分類開示(外交/議会対策/報道など)
現状では「チェック機能ゼロ」のまま巨額の税金が消えており、主権者である国民の視点からも放置はできません。
■まとめ:内閣官房機密費は“国家のブラックボックス”。使途の透明化が問われている
観点 | 内容 |
---|---|
正式名称 | 内閣官房報償費(政策推進費) |
財源 | 税金(一般会計から拠出) |
年間予算 | 約12〜14億円(2023年度:約12.6億円) |
使い道 | 外交、情報活動、政治工作、報道対策など(詳細非開示) |
開示状況 | 金額・時期のみ。中身・相手は完全非公開 |
廃止論 | 一部に根強いが、政府は“国家機密”として必要性を主張 |
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