2025年5月14日、国民民主党は第27回参議院議員通常選挙に向けた比例代表の公認内定予定者を発表した。だが、その顔ぶれには過去にスキャンダルや問題発言で世間を騒がせた人物が含まれており、党が掲げる「正直な政治」との整合性が問われている。本記事では、候補者ごとの過去の経歴や疑義を精査する。
候補者リストに入る前に――なぜこれが問題なのか
2025年の通常国会閉会後、国民民主党は“現実路線・中道改革”を掲げて急速に存在感を強めつつあり、岸田政権への不満票の受け皿として注目を集めている。支持率上昇は党にとって追い風だが、その一方で「人材不足」という構造的な問題が浮き彫りになった。
比例代表の擁立候補は、個々には知名度や実績を備えるものの、過去の言動や倫理観において党の掲げる方針と大きく食い違う人物が多い。
例えば:
- 減税に否定的な姿勢を貫いてきたにもかかわらず、「手取りを増やす」とする党是の政党から立候補する者。
- 家庭崩壊を伴う不倫スキャンダルの当事者でありながら、子育て支援を語る者。
- 科学的根拠に乏しい反ワクチン・陰謀論的発言を繰り返す者。
いずれも、有権者にとっては「なぜこの人が?」という疑問を抱かせる人選であり、国民民主党が掲げる「正直な政治」との整合性を自ら損ねているようにすら見える。
それでは、個々の候補者がどのような経歴・問題点を抱えているのか、順に見ていこう。
足立康史(元職)――減税否定派と「手取り増」政党の矛盾
維新時代から強い発信力で知られた足立氏は、政策通を自任する一方で、たびたび物議を醸す言動を繰り返してきた人物だ。国民民主党が主張する「減税・実質賃金向上」といった方針と真逆のスタンスをとっていた過去があり、今回の擁立には「党の理念との不一致」「選挙目当ての合流ではないか」といった疑問の声が上がっている。
また、SNSや言論活動での過激な言動、名誉毀損の訴訟歴も含め、発信スタイルの是非が再び問われることになる。
- 【減税慎重派としての立場】 消費税減税に一貫して否定的な立場を取り、SNS上でも「ゼロイチで減税を語ることは政治家として恥」と発言。減税推進を掲げる国民民主党の主張とは根本的な政策上の乖離が見られ、今回の擁立は党方針との相性の悪さが指摘されている。
- 【党内対立と処分】 日本維新の会に所属していた際、選挙活動に関するSNS投稿が問題視され、党紀委員会にかけられた過去がある。
- 【名誉毀損訴訟】 YouTuber女性に対する名誉毀損で訴えられ、東京地裁から損害賠償33万円の支払いを命じられた。
- 【過激な発言】 過去にSNS上で「朝日新聞、死ね」と投稿し、強く批判された。
菅野志桜里(元職)――不倫・炎上・倫理観が問われる再登場
元検察官として華々しく政界入りした菅野氏だが、その後の私生活や政治倫理を巡るトラブルで信頼を大きく損なってきた人物である。かつては女性の権利を主張する立場で注目を集めたが、不倫スキャンダルとその後の家庭トラブルを経て、今ではその主張の正当性すら疑問視されている。
また近年では、自身の立場と乖離した育児政策の発信が炎上するなど、有権者との認識のズレが浮き彫りになっている。
- 【不倫疑惑】 倉持麟太郎弁護士との不倫疑惑が報道され、家庭崩壊の原因になったとされる。
- 【議員パスの不適切使用】 国会議員鉄道乗車証を私的に使用したとの疑惑が報じられた。
- 【親権トラブル】 離婚後、元夫から子どもとの面会を拒否されたとして損害賠償請求訴訟を起こされた。なお、不倫相手の妻は精神的苦痛の末に自殺しており、この件に関する倫理的な批判も続いている。
- 【子育てケアマネージャー炎上】 2025年4月、菅野氏がSNS上で「3年以内に子育てケアマネを全家庭に」と発言したことで炎上。制度の財源や効果への懸念に加え、不倫により自身と相手の家庭を崩壊させた過去との整合性が問われ、「家庭を壊した人が子育て支援を語るのか」と批判が集中した。フィンランドのネウボラ制度を参考にした構想だが、育児支援の信頼性と発言者の倫理性の両面で物議を醸している。
須藤元気(元職)――陰謀論と党是のねじれ
異色の経歴を持ち、格闘家から国会議員へと転身した須藤氏は、そのユニークな感性とパフォーマンスで注目を集めてきた。一方で、科学的根拠に乏しい主張や反ワクチン的発言、陰謀論的言説を発信してきたことから、信頼性を疑問視する声も強い。
今回の国民民主党からの擁立に際しては、党の政策方針との大きな齟齬が取り沙汰されており、有権者の間に混乱を招いている。
- 【離党・無所属出馬】 立憲民主党を離党し、無所属で東京15区から衆院選に出馬したが落選した。
- 【レスリング界発言】 女子レスリングのパワハラ問題を巡り、告発者に否定的な発言をして波紋を呼んだ。
- 【反ワクチン・陰謀論的発言】 新型コロナワクチンに対して一貫して否定的な立場を取り、「打てば打つほど感染する」など科学的根拠に乏しい主張をSNS上で発信。ワクチン接種即時中止を訴えるなど、反ワクチン的・陰謀論的な言説を展開しており、医療関係者などから批判を浴びた。
- 【党方針との乖離】 科学的根拠に基づいた政策を重視する国民民主党の基本方針とは明らかに齟齬があり、擁立に対して党内外からの批判を招いている。
薬師寺道代(元職)――唯一の堅実派?
4人の候補の中で唯一、明確なスキャンダルが報じられていないのが薬師寺氏である。現場医師としての経験を生かした政策志向は一貫しており、医療・福祉分野における提言には現実味がある。
比例候補全体の信頼性に疑問が持たれる中、薬師寺氏の存在はむしろ「例外的に真面目」と受け取られている節もある。ただし、他の候補者と一括りに並べられることで、逆にマイナスの影響を被る懸念もある。
- 【プロフィール】 医師として高齢者医療や在宅医療の分野に従事。2013年に「みんなの党」から参院比例代表で初当選。後に自民党入りし、2021年衆院選では愛知2区から出馬予定だったが、医師としての責務を優先して辞退。
- 【党方針との相性】 現場での医療経験をもとに、エビデンスに基づく福祉・医療政策を重視しており、現実的・中道路線を掲げる国民民主党の政策方針とは比較的整合性があると評価されている。
- 現時点で公的に報じられているスキャンダルや問題行動は確認されていない。
なぜ問題候補が集まったのか?――背景にある「人材不足」
国民民主党はここ数カ月、物価高対策や現実的改革路線を掲げて支持率を徐々に上げてきた。しかし、支持拡大に比例して擁立する人材の確保に苦しんでいる現状が浮き彫りとなっている。
今回の比例代表候補者の顔ぶれは、いずれも知名度はあるものの過去にスキャンダルや炎上歴を抱えた人物ばかり。まさに「話題性先行」「実績軽視」とも取れる布陣であり、党のガバナンスと候補者リクルーティング体制の脆弱さが露呈した格好だ。
中でも、党方針と逆行するような政策スタンスや倫理観を持つ候補をあえて擁立している点に、有権者からの強い違和感が漂う。
このような構図は、一定の注目を集めることはあっても、選挙戦全体の説得力や党としての一貫性を大きく損なうリスクをはらんでいる。
終わりに
候補者の多くに過去の問題行動や政策理念の乖離が見られ、「正直な政治」を掲げる国民民主党がどのように説明責任を果たすのかが問われている。特に有権者に対して誠実な候補者選定がなされているかどうかは、党の信頼性そのものに関わる問題である。
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