2025年5月19日、石破茂首相は参議院予算委員会において、「日本の財政状況はギリシャよりもよろしくない」と発言した。この発言は、単なる政治的レトリックを超えて、国内外の市場に不必要な動揺をもたらすものであり、極めて不適切な内容である。
■ 経済音痴の極み:自国通貨建て国債とギリシャの本質的違いを無視
ギリシャは自国通貨を持たず、ユーロ建てで国債を発行していたが、日本は自国通貨である円建てで国債を発行している。通貨発行権を持つ日本は、理論上、デフォルト(債務不履行)リスクが極めて低く、ギリシャ型の財政危機とは構造的に無縁である。
この基本的な違いを無視して「ギリシャよりやばい」と主張することは、経済構造を理解していないことの表れであり、冷静な財政分析ではなく感情的な危機感の煽動に等しい。
■ 市場への悪影響:株・債券・為替へのネガティブシグナル
国家の首脳が「財政破綻リスクが高い」と暗示するような発言を行えば、それは国内外の投資家にとって最悪のシグナルとなる。
- 国債市場では、金利上昇(債券売り)を誘発する可能性が高い。
- 株式市場では、財政緊縮や増税リスクの織り込みによって、内需株などが売られる展開も想定される。
- 為替市場では、一時的な円安あるいは信認低下による資金流出が発生する恐れもある。
市場関係者が特に重視するのは「政府の整合的なメッセージ」だが、今回の発言はその前提を大きく損なう。
■ 世界に対する悪影響:信用国・日本の地位を自ら貶める
日本は世界最大の債権国であり、長年にわたり通貨・債務の信認を維持してきた。そんな国の首相が自ら「我が国の財政は破綻寸前」と受け取られかねない発言をすれば、国際社会における日本の金融的信頼性にもヒビが入る。
信用をベースに動く現代の金融市場において、こうした自己否定的なメッセージは極めて危険である。
■ まとめ:リーダーとしての資質が問われる
今回の発言は、財政健全化という大義を盾にしながら、実態を踏まえない形で市場や国民の不安を煽った点で、極めて無責任である。
首相として求められるのは、正確な認識と冷静な発信によって、信認を高めることである。石破首相の「ギリシャよりやばい」発言はその真逆であり、経済音痴と言わざるを得ない。政府内外からも、こうした発信に対する厳正な再評価が必要である。