1. 憲法上の制約よりも「地域代表」の重視
日本国憲法は「人口比例」による議員配分を義務付けているわけではなく、特に参議院では「都道府県単位での代表性」が重視されてきた。そのため、単純に人口が減ったからといって定数を減らすと、過疎地域の代表性が著しく損なわれることになり、地方切り捨てという批判が生まれやすい。
2. 議員自身による自己否定を伴うため、実行されにくい
議員定数削減は、現職議員にとっては「自分のイスを減らす」ことを意味する。超党派での合意形成が必要だが、政党間で利害が異なるため合意が難しく、議論は繰り返されても実行されにくい。定数削減を公約に掲げる政党もあるが、実際の実現には至っていない。
3. 「1票の格差」是正とのジレンマ
選挙制度改革では、人口の多い都市部と過疎地の格差是正が主眼とされることが多く、定数そのものの削減よりも、区割りの見直しや定数の「増減調整」で対応される傾向にある。そのため、定数全体の削減にはつながりにくい。
4. 比例代表制の特性と小政党の生存戦略
比例代表制は「死票を減らし、多様な意見を反映する」役割を持つ。そのため、比例の定数を減らすことは小政党の議席獲得を困難にし、政治的多様性が失われる可能性がある。こうした理由から、比例部分の削減には特に慎重な姿勢が見られる。
5. 議員業務の複雑化という言い訳
人口は減少しているが、「議員の業務は多様化・複雑化しているから定数は維持すべき」という反論もある。しかしこれは、組織改革や補佐人材の活用で対応可能であり、定数維持の根拠としては弱い。実態としては、政治的な自己保身が背景にあると見るべき。
ナンセンスではないのか?という国民感覚は妥当か
● 国民の素朴な疑問はもっとも
- 人口が減り、地方議会や行政もスリム化しているのに、国会議員だけが現状維持というのは「時代に逆行している」と感じられる。
- 国民には増税や社会保障の削減など「痛みの共有」が求められる一方で、議員だけが現状維持、という構図は不公平感を助長する。
● 定数削減は可能だが、実行のインセンティブがない
- 憲法や法律上は定数削減は可能。
- しかし、議員自らが自分の権益を削ることに対しては極めて消極的。
- 政治的インセンティブが存在しない限り、定数削減は進みにくい。
結論
人口が減っているのに議員定数が減らないのは、制度上の限界ではなく、政治的な意思と利害の対立によるものである。
「減らせないのではなく、減らしたくない人が多い」
という構図が根底にあり、国民の感覚とは乖離したまま推移している。
※補足情報の追加や、具体例(維新の主張、公明党の比例死守など)も対応可能。