2025年8月16日、広陵高校は公式サイトを更新し、文藝春秋社「文春オンライン」に掲載された記事に対して、異例ともいえる詳細な反論を発表しました。記事では、2015年当時に同校硬式野球部に所属していた元部員A氏が「集団暴行を受けた」と証言していましたが、学校側はこれを全面否定。「暴行ではなく、ドアの不具合による偶発的な事故」であると強調しました。さらに救急搬送や検査の経過、ドア修理の記録までも細かく列挙し、“文春砲返し”とも言える形で応戦しました。
火に油を注ぐ「毅然とした態度」
しかし、このような正面衝突の姿勢は、危機管理の観点から見て逆効果です。SNS上では「必死に自己弁護している」「被害者を追い詰めているだけではないか」といった批判が強まりました。さらに「訴訟をちらつかせて脅しているように見える」との声も広がり、余計に反感を買う結果となっています。自らの過ちは棚上げしているのに、批判には強硬姿勢で返すという構図が露骨に浮かび上がり、世間の不信感を深めています。そもそも炎上中に「毅然とした態度」を見せること自体、火に油を注ぐ結果になりがちです。完全な誹謗中傷や犯罪予告については水面下で粛々と法的対応すればよく、わざわざ声明で「法的措置を含めて対処」と表明する必要はありませんでした。
閉鎖性と自己都合主義の象徴
広陵高校は名門野球部を抱える伝統校であり、その運営姿勢には長年「閉鎖的体質」との指摘がありました。今回の公式反論は、透明性を高めるどころか、「自己都合主義」「腐敗と退廃」を感じさせる対応となっています。実態がどうであれ、あくまで学校側の見解に過ぎず、単なるお気持ち表明の域を出ません。しかも10年前の事態であるため、確証を得ることは難しく、当時対応にあたった用務員2名のうち片方はすでに亡くなられていることも伝わっています。真偽不明のうちに「隠蔽だ」と断定すること自体は誹謗中傷になり得ますが、そうした可能性を残したままお気持ち表明に踏み込んでしまうのは完全な誤りです。外部から見れば、学校全体が世間との対話よりも自己防衛を優先しているように映り、閉鎖的な雰囲気がさらに濃く漂ってしまいました。
本来あるべき危機対応
本来ならば、
- 再調査や第三者委員会への全面委託を強調する
- 被害者や関係者への配慮を最優先に示す
- 誹謗中傷対応は水面下で粛々と進める
こうした対応が求められたはずです。ところが広陵高校は「事実無根」と強く打ち消す方向に突き進み、結果として世間の不信感を高めることになりました。
焦りの背景にある“受験生確保”
ではなぜ広陵高校はここまで焦ってしまっているのでしょうか。背景にはオープンスクールの日程が迫っている事情があります。公式サイトによれば、9月6日から部活動体験や個別説明会が始まり、その後も9月12日、9月19日、10月3日、10月17と特別進学コース対象の個別説明会が続きます。いまの悪評のまま突入してしまえば閑古鳥が鳴くのは必至であり、学校の収益は大きく悪化するでしょう。受験生や保護者にとって、わざわざ評判の悪い学校を選び、自らの将来に陰を落とすリスクを背負う理由はありません。
まとめ
広陵高校の“文春砲返し”は、法的・事実的な正しさをアピールしたつもりでも、世間には「時代錯誤な自己防衛」にしか映りませんでした。毅然とした態度を見せれば見せるほど、閉鎖性や自己都合主義のイメージが強まり、名門校の信頼回復は一層遠のくことになるでしょう。