2025年8月、広陵高校を巡る一連の問題は、新たな局面を迎えた。甲子園出場辞退を決断した広陵高校の堀正和校長が、広島県高等学校野球連盟(広島県高野連)副会長職を8月10日付で辞任したのである。そして、そのわずか9日後には、広島県高野連が異例の「SNS誹謗中傷対策声明」を発表した。
1. 堀正和校長(副会長)辞任の背景
- 辞任日:2025年8月10日
- 辞任者:堀正和氏(広島県高野連副会長・理事、広陵高校校長)
- 辞任理由:「一身上の都合」
形式上は「個人的理由」とされたが、甲子園出場辞退をめぐる混乱の責任を取らせる意味合いが強いとみられる。広陵高校の現役部員間暴行事件(2025年1月発生)に端を発した一連の問題は、SNS上での被害訴え拡散によって急速に炎上し、学校や高野連の対応に批判が集まっていた。堀校長は副会長職を辞任することで、事態の沈静化を図った可能性が高い。
2. 8月19日:広島県高野連の誹謗中傷対策声明
辞任からわずか9日後の2025年8月19日、広島県高野連は「令和7年度秋季広島県高等学校野球大会」にあわせて、異例の声明を発表した。
● 声明の要旨
- 選手・審判・スタッフなど大会関係者への誹謗中傷や差別的言動は決して看過しない
- 必要に応じて法的措置を含む毅然とした対応を取る
- 日本学生野球憲章に基づき、フェアプレー精神の尊重と健全な応援環境の維持を呼びかけ
これは、広陵高校を巡る一連の騒動でSNS誹謗中傷が過熱し、選手やスタッフへの個人攻撃に発展したことへの危機感を反映しているとみられる。
3. 広島県高野連の戦略:「トカゲのしっぽ切り」と強硬姿勢
今回の一連の動きを整理すると、広島県高野連は次の2つのステップを踏んだと考えられる。
- 堀校長(副会長)の辞任で「責任の所在」を限定
- 広陵高校の問題を「個別校レベルの問題」として切り離し、高野連本体の責任を回避。
- 声明で強硬姿勢を打ち出し、組織批判を封じ込め
- 「誹謗中傷対策」を名目に、法的措置を示唆することでSNS上の批判を牽制。
さらに広島県高野連側としては、「我々は事実を把握していながら黙認していたわけではない。あくまで広陵高校からの報告内容が過小であり、十分な情報が得られなかった」という立場を示唆している。
つまり、今回の高野連の動きは、広陵高校問題を「副会長の辞任」で区切り、組織本体の防御を固める狙いがあったと読み取れる。
まとめ
- 8月10日:堀正和校長(広島県高野連副会長)が辞任
- 8月19日:広島県高野連が誹謗中傷対策声明を発表
この2つの動きは切り離して考えるべきではない。高野連は「トカゲのしっぽ切り」によって責任の範囲を最小化し、その上で法的措置を示唆する声明で批判の拡大を抑え込む構えを見せている。今後の第三者委員会の調査結果次第では、さらに組織防衛の動きが加速する可能性が高い。