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広陵高校「部内アンケート」の限界と沈黙を促す構造

2025年8月21日、広陵高校は中井哲之監督・中井惇一部長の交代を発表すると同時に、野球部員全員を対象とした「部内アンケート」で暴力などの問題がないことを確認したと説明し、新体制で8月23日開幕の秋季広島県大会に出場する方針を示しました。しかし、この発表は多くの疑問を残しています。特に、加害側とされる生徒も含まれるアンケートで“問題なし”と結論づけることの妥当性が問われています。


1. 部内アンケートでは真実が出にくい理由

● 将来がかかっている生徒たち

高校野球部員にとって、甲子園や秋季大会は進学・就職・推薦枠など、将来に直結する極めて重要な舞台です。そのため:

  • 加害側の生徒:自ら不利になる申告をする可能性はほぼゼロ
  • 被害側の生徒:多少の被害を受けていたとしても、「問題を公表=大会出場停止・推薦枠消滅」というリスクから沈黙を選びやすい

● 同調圧力と報復リスク

部内という閉鎖環境では、仲間内の雰囲気や上下関係により、本音で回答しづらい構造が存在します。特に、加害者とされる上級生が在籍している中では、被害者が告発することは現実的に困難です。


2. 広陵高校の「問題なし」発表の意図

今回のアンケート公表には、学校側と高野連の戦略的意図が見え隠れします:

  • 秋季大会への出場正当化
    → 「現時点で新たな問題はない」という形式的根拠を作る
  • 監督・部長交代とのセットで体制刷新を演出
    → 「改革済み」という印象を打ち出す狙い
  • 第三者委員会調査までの時間稼ぎ
    → 秋季大会出場という既成事実を先に固めたい意向が透けて見える

3. 第三者委員会との乖離リスク

広陵高校は同時に、弁護士を含む第三者委員会を設置し、調査を開始すると発表しています。しかし、部内アンケートと第三者委員会の結果が乖離する可能性は高いです。

  • 第三者委員会は外部の専門家が主導し、匿名性の高い聞き取りを行う可能性が高い
  • そこで新たな被害証言が出れば、「学校が事実を過小評価した」と批判されるリスクがある

4. 今後の焦点

  • 秋季大会への加害生徒の出場是非
  • 第三者委員会の調査方針と結果公開の範囲
  • 広島県高野連が追加的な指導や処分を行うかどうか

 

現状の「問題なし」発表は、秋季大会出場を優先する学校側の意向が強く反映されており、実態把握という観点では不十分です。第三者委員会の調査結果次第では、再び批判が集中する可能性があります。

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