近年、日本で大きな議論となっているのが「不法滞在者の強制送還」をめぐる問題です。特に、クルド人コミュニティなど在留資格を失った外国人を支援するNPOや人権団体と、法令に基づき退去を進める入管行政との対立が深刻化しています。本記事では、入管行政側の立場に寄りつつ、この構造を解説します。
1. 入管行政の基本方針:不法滞在は送還対象
日本の出入国管理及び難民認定法(入管法)では、在留資格を失った外国人は退去強制の対象です。
- 不法滞在=自己責任
- 在留資格が切れた時点で、強制送還は「適法な行政手続き」
- 子どもが日本で生まれたかどうかは関係なく、親子ともに送還対象
入管庁は、「ルールを守らない人を例外的に認めれば制度が崩壊する」という立場を強く打ち出しています。
2. NPO・人権団体の主張:子どもの権利を最優先
一方、NPOや一部の人権団体は「子どもの権利」を前面に掲げて活動しています。
- 「日本語しか話せない子どもを追い出すのは人権侵害」
- 「突然の強制送還は家族分離を引き起こす」
- 「多文化共生社会の実現を目指すべき」
しかし、こうした主張は「不法滞在という事実」を軽視していると批判されることも多いです。
3. 対立構造の本質
(1) 行政側の立場
- 法治国家として、入管法を遵守することが最優先
- 難民認定は「個別具体的な迫害の証拠」が必要
- 子どもがいるかどうかは考慮対象だが、決定打にはならない
(2) NPO側の立場
- 子どもを中心とした「感情的アピール」で世論形成
- 弁護士やメディアと連携し、行政判断を覆そうと試みる
- 「送還すれば人権侵害」という印象を作り出す
この対立は20年以上続いており、根本的な解決には至っていません。
4. NPO活動への批判
(1) 不法滞在を助長する懸念
NPOの活動は、結果的に「子どもを理由に滞在を続けられる」という誤った期待を生み、制度の健全性を損なう可能性があります。
(2) 成果は極めて限定的
- 日本の難民認定率は約2%と世界的に見ても極めて低い
- クルド人やミャンマー人などのケースでも、在留特別許可はほとんど認められていない
- 実際には、多くのケースで強制送還されているのが現実です
(3) 子どもを「盾」にした寄付金集め
- 「涙を流す子ども」という構図は同情を誘いやすい
- その結果、寄付金や補助金が集まりやすくなる
- 行政的には「人道」よりも「制度維持」を優先するため、こうした活動との溝は深まっています
5. まとめ
- 不法滞在は自己責任であり、強制送還は適法かつ当然の行政手続き
- NPOは「子どもの権利」を旗印に世論を動かそうとするが、法的効果は限定的
- 行政は制度崩壊を防ぐ立場から、一貫して厳格な姿勢を維持
- 結果として、NPOの活動は「不法滞在を助長するだけで、実質的な成果は乏しい」という批判が強い