1. 政策の経緯と現状
- 2025年7月参院選公約:自民党は「国民1人あたり2万円、住民税非課税世帯には4万円給付」を掲げた。
- 選挙結果:自民党は歴史的大敗を喫し、公約が有権者に支持されなかった形に。
- 現在の動き:石破政権は、選挙で否定された政策であるにもかかわらず、公約を実施する方向で検討中。
2. なぜ否定された政策を実施するのか
(1) 公約実行による「誠実さ」アピール
- 新政権として「公約を守る姿勢」を示す狙い。
- 公約を撤回すると「公約違反」と批判されるリスクを回避したい。
(2) 与党内向けの求心力確保
- 自民党内で石破首相の指導力に懐疑的な派閥も多い。
- 公約実行によって「結果を出す首相」としての存在感を示す狙い。
(3) 支持率対策としてのポピュリズム
- 現金給付は国民にとって「分かりやすい恩恵」であり、短期的な支持率回復を狙った可能性が高い。
3. 現金給付の問題点
(1) 経済効果の薄さ
- 2万円では生活費1項目分にも満たないケースが多く、消費拡大効果は限定的。
- インフレ環境下では、1〜2か月分の値上げ分を埋める程度で消える可能性大。
(2) 財源問題
- 一律給付で総額約2.5兆円。
- 同時にガソリン暫定税率の撤廃で税収減が見込まれる中、新たな車両関連税の導入を検討するなど、政策として整合性に欠ける。
(3) 有権者との認識の乖離
- 参院選で否定された公約をそのまま実施するのは、民主主義的な観点から不信感を招きかねない。
4. 「財源がないのに支出は増える」構造的問題
(1) 新制度は増やすが支出は減らさない
- 日本の行政は「新制度・新庁の設立」には積極的だが、既存制度の廃止には消極的。
- 各省庁は予算要求主義で「前年より多く取る」ことが目的化。
(2) 官僚・政治家・業界団体の三位一体構造
- 新制度・補助金は、官僚・族議員・業界団体に利益をもたらすため廃止が困難。
(3) 国民負担の先送り
- 減税のように見せかけても、新税や別の形で回収する傾向が強い。
- ガソリン暫定税率撤廃→新たな車両税の検討は、その典型例。
5. 本来取るべきアプローチ
- 的を絞った支援策:住民税非課税世帯、低所得者、子育て世帯への重点給付。
- 既存制度・補助金の見直し:効果が薄い政策を整理し、財源を捻出。
- 透明性のある財政運営:減税・給付・新税の関係を国民に明確に説明。
6. 結論
- 参院選で否定された「2万円給付」をそのまま実施するのは、
- 民主主義的に不適切
- 財政的に非効率
- 政策整合性を欠く
短期的な支持率対策より、支出構造の見直し+的確なターゲット支援への転換が急務。