導入文
「マイナ保険証があるのに、なぜまた紙が配られるのか?」――健康保険証の代わりとして導入された「資格確認書」は、見た目も使い方も従来の保険証とほぼ同じです。そのため「無駄金」「二重行政」との批判が絶えません。本記事では、この資格確認書がなぜ生まれたのか、政治的背景や高齢者の不安といった社会的要因を踏まえて徹底解説します。
資格確認書とは?
- 健康保険証の代替として発行される書類。
- マイナ保険証への移行期に「誰でも医療機関で提示できるもの」として交付。
- 見た目はほぼ従来の紙の保険証と同じで、本人確認や医療機関での利用方法も同じ。
- 有効期限は1年ごとで、更新が必要。
つまり、利用者からすれば「紙の保険証を名前だけ変えたもの」にすぎません。
無駄金と批判される理由
- 重複コスト:マイナ保険証を持っていても全員に配布されるため、印刷・郵送などのコストが二重にかかる。
- 実質的に保険証と同じ:利用者にとって違いがほとんどない。
- 制度の矛盾:紙をなくすはずが、結局紙を残す形になっている。
- 都市部では完全に無駄:普段からマイナ保険証を使いこなせる層や、顔認証リーダーが普及している都市部の人々にとっては、資格確認書はただの「紙の予備」でしかなく、制度の存在意義を感じにくい。
導入の政治的背景
与党(政府・自民党)の立場
- 当初の方針は「2024年末で紙の保険証廃止、マイナ保険証に一本化」。
- 行政の効率化、デジタル化推進を掲げていた。
野党(特に立憲民主党)の反対
- マイナシステムの不具合や誤登録問題を指摘。
- 「紙廃止は拙速で、国民の医療アクセスが危うくなる」と国会で強く追及。
- 高齢者や地方住民の不安を代弁する形で、紙の存続を求めた。
妥協の結果
- 政府は廃止方針を変えず、**「資格確認書を全員に交付して安全網を残す」**という折衷案を採用。
- 実質的に「保険証を看板掛け替え」しただけの制度が誕生。
高齢者と介護現場への配慮
操作不安
- 高齢者は暗証番号やICカード操作に不安を抱えるケースが多い。
- 顔認証があるにもかかわらず、仕組みを知らない・導入機器が整っていない現場も多かった。
介護施設での代理利用問題
- 入院患者や施設入所者がマイナカードを持ち歩けない。
- 家族や職員が代理で利用するには、紙のほうが扱いやすい。
- 現場から「紙を残してほしい」という声が強かった。
政治的配慮
- 高齢者は最大の有権者層(票田)。
- 彼らの不安を軽視すれば、与野党問わず選挙で大打撃になる。
- そのため「資格確認書」を残すのは、政治的な安全策でもあった。
まとめ
資格確認書は「無駄金」「二重行政」と批判されても仕方がない仕組みです。見た目も使い方も従来の保険証と変わらず、制度の目的である「紙廃止」と矛盾しています。特に、都市部でマイナ保険証を問題なく使える世代にとっては完全に無駄な存在です。とはいえ、その背景には――
- 野党による「拙速反対」
- 高齢者や介護現場の不安
- 政治的な票田への配慮
といった複雑な要因が絡み合っています。表面的には無駄に見えても、政治的妥協の産物として生まれたのが資格確認書なのです。