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連立の岐路に立つ公明党 ― 求心力崩壊の危機

はじめに:連立の揺らぎと報道の衝撃

10月6日夜、読売新聞が「公明党が自民党との連立のあり方を巡り緊急役員会を開く」と報じた。創価学会内部および公明党内で、自民党の高市早苗総裁の保守的な政策への不信と警戒が急速に広がっている。「連立離脱も辞さない」という強硬な意見まで飛び交い、長年維持されてきた自公連立がついに崩壊の瀬戸際に立たされている。これは単なる政党間の軋轢ではなく、公明党と創価学会そのものの存続に関わる“組織的危機”といえる。


池田大作氏亡き後の「象徴を失った学会」

創価学会の精神的支柱であった池田大作氏は2023年11月に逝去。戦後日本最大の宗教運動を率いたそのカリスマを失った今、学会は明確な指導者不在のまま漂流状態にある。集団指導体制という曖昧な構造は、求心力をさらに弱め、信仰的統一感も喪失しつつある。かつては「池田先生の言葉」が活動の原動力だったが、今では「何を信じ、誰に従うのか」という根源的問いが信者の間で渦巻いている。政治部門である公明党も、その影響から逃れられない。


高齢化と若年層の離脱――“信仰動員モデル”の崩壊

創価学会員の高齢化は深刻であり、70代以上が活動の中心を占める。若年層の信者は「親の信仰を継がない」傾向が強まり、選挙支援への参加率も急落している。かつて全国的に展開された戸別訪問や電話作戦は今や影を潜め、「信仰と政治は一体」という理念は形骸化している。結果、公明党は票を減らし続け、学会の動員力は見る影もないほど衰退した。


データで見る公明党の得票崩壊

2005年頃の全盛期、公明党は900万票近い比例得票を誇っていた。だがその勢いは急速に失われている。

選挙得票数(比例区)備考
2005年衆院選(郵政選挙)約8,987,620票創価学会の動員力ピーク期。
2009年衆院選約8,054,007票民主党政権誕生。野党転落。
2012年衆院選約7,116,474票自民と共に政権奪還。
2014年衆院選約7,314,236票高齢化進行。
2017年衆院選約6,977,712票700万票割れ目前。
2021年衆院選約7,113,557票一時的な持ち直し。
2022年参院選約6,181,431票政権与党として最低水準。
2024年衆院選約5,960,000票過去最少得票。
2025年参院選約5,210,000票ついに500万票台へ。

2005年の約900万票から、2025年には約520万票へ――わずか20年で4割以上の支持を失った。創価学会の組織的支配力は、すでに崩壊寸前だ。

この減少は単なる数字ではない。“信仰を票に変える装置”そのものが機能不全に陥っているのだ。


連立を外れた場合に加速する信者離れ

もし連立を解消すれば、公明党は自民党の庇護を失うだけでなく、創価学会員にとって「政治に関わる誇り」も完全に失われる。与党にいることが信仰実践の証とされてきた学会にとって、それは精神的な支柱の喪失に等しい。結果として、若年層を中心に信者離れは爆発的に進み、活動離脱・無関心層が増大する可能性が極めて高い。

その結果、比例票は500万票を割り込み、組織維持すら困難になるとの見方もある。宗教団体としての存在感は残っても、政治勢力としての生命線は断たれる――まさに創価学会・公明党の同時衰退シナリオである。


連立解消のリスクと現実的制約

自民党との連立は、公明党にとって「生き残りの最後の糸」である。政権参加によって国土交通省などを握り、政策影響力と存在感を保ってきた。しかしそれが断ち切られれば、

  • 国政での影響力喪失
  • 支持母体の活動意欲低下
  • 小選挙区での議席喪失リスク

といった壊滅的打撃が予想される。現実派は「離脱は自殺行為」と警告するが、理念派は「このままでは学会の信仰理念が崩壊する」と主張し、党内分裂は避けられない状況だ。


三つのシナリオ

シナリオ内容公明党への影響
① 連立維持条件付きで高市政権と協調体制維持だが求心力は戻らず。延命策に過ぎない。
② 部分的距離政策連携のみに縮小支持者離れの速度は遅まるが、根本的再生には至らない。
③ 連立解消理念優先で自民と決別信仰理念は守れても、党勢は急速に崩壊。消滅リスクも。

終章:創価学会と公明党、二つの沈黙

池田大作氏亡き後、公明党と創価学会は共に「象徴を失った船」のように漂っている。連立を外せば崩壊、維持しても衰退。どちらを選んでも先細りしかない現実の中で、もはや“信仰と政治の黄金時代”は終わりを告げた。いまや両者は、戦後最大の宗教政治ネットワークとしての存在意義を失いかけている。

創価学会と公明党は、静かに、しかし確実に「求心力の消滅」という終末段階に突入している――。

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